在留資格「興行」【1号】

在留資格「興行」【1号】は、演劇、演芸、歌謡、舞踊、演奏その他これらに類する芸能活動が対象となります。海外アーティストやK-POPアイドルの在留には、この在留資格に該当します。在留資格「興行」【1号】については「イ・ロ・ハ」の3区分に再編され、それぞれに異なる審査基準と適用条件が設けられました。たとえば、設備の整った小規模施設での継続的な興行活動は「イ」、公共性や高額報酬など一定の条件を満たす中大規模施設での活動は「ロ」、イ・ロに該当しない興行活動は「ハ」と分類されます。このように、活動内容や施設の信頼性に応じて、申請区分が細分化されました。そこで本ページでは、最新制度に基づく興行ビザ1号の全体像と各区分の違い、申請時の注意点について詳しく解説します。

在留資格「興行」【1号】イ・ロ・ハの比較

在留資格「興行」【1号】は、たとえば施設の種類や活動規模、報酬額などに応じて「イ・ロ・ハ」に分類され、それぞれ異なる要件が設けられています。それぞれの違いを下表にまとめます。

区分内容基準
1号イ比較的小規模な公演(客席100名未満など)収容人数・報酬額・施設設備などの全ての条件を満たすことが求められる
1号ロ条件付きで認められる中規模以上の活動等以下の条件の内、何れか一つに該当すること
①公的主催
②テーマパーク
③報酬高額
④収容人数100人以上
1号ハイ・ロに該当しないもの・審査が厳しく、多くの提出書類が必要となる
・招へいされる外国人に学歴・経験が必要

在留資格「興行」【1号】イ

1号イの対象

演劇、歌謡、舞踊などの芸能活動を行うにあたり、たとえば一定の実績を有する日本の機関(後述の要件を満たすもの)と契約を結んで活動する場合が、1号イの対象となります。ただし前提として、風俗営業1号~3号の許可を受けた店舗での公演は対象外です。具体的には、たとえばライブハウスや劇場、ホールなど、小規模な常設施設で行われる興行がこれに該当します。

1号イの要件

基準省令1号イ

申請人が次のいずれにも該当する本邦の公私の機関との契約に基づいて、風営法第二条第一項第一号から第三号までに規定する営業を営む施設以外の施設において行われるものであること。

1.外国人の興行に係る業務について通算して三年以上の経験を有する経営者又は管理者がいること。

2.当該機関の経営者又は常勤の職員が次のいずれにも該当しないこと。

  • 人身取引を行っていないこと
  • 売春防止法等の罪により刑に処せられていないこと
  • 暴力団員でないこと等

3.過去三年間に締結した申請人と本邦の機関との契約に基づいて興行の在留資格をもって在留する外国人に対して支払い義務を負う報酬の全額を支払っていること。

4.前各号に定めるもののほか、外国人の興行に係る業務を適正に遂行する

風営法第二条第一項

  1. キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業
  2. 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)
  3. 三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの

1号イの必要書類例

【申請人本人関連書類】

書類名内容
在留資格認定証明書交付申請書入管指定様式
証明写真縦4cm×横3cm
パスポートコピー顔写真ページ、ビザページ等
履歴書・活動経歴書(任意)参考資料として提出
雇用契約書または出演契約書期間・報酬(月額20万円以上)・業務内容を明記
興行スケジュール表公演日時・内容・場所・回数・準備期間等を具体的に記載

【招へい機関関連書類】

書類名内容
興行内容説明書活動の詳細、スケジュール、施設名などを明記
興行施設の資料施設のレイアウト図、客席数、控室等の設備状況が分かるもの
施設の使用許可書または契約書興行日程分の施設予約・使用許可を証明するもの
招へい機関の概要書類登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、会社案内、定款など
過去の招へい実績資料過去3年間の招聘者一覧、在留カード写し、報酬支払の実績

在留資格「興行」【1号】ロ

1号ロの対象

演劇や演芸などの活動のうち、たとえば国や自治体、学校主催の公演、あるいは敷地10万㎡以上のテーマパークでの出演などが対象となります。加えて、客席100人以上の非接待型施設での公演や、報酬が1日50万円を超え30日以内に終了する短期興行も該当し、一定の条件を満たせば申請が可能です。

1号ロの要件

基準省令1号ロ

申請人が従事しようとする活動が、次のいずれかに該当していること

  1. 国若しくは地方公共団体の機関が主催する演劇等の興行又は又は学校教育法に規定する学校等において行われるものであること
  2. 国、地方公共団体等の資金援助を受けて設立された本邦の公私の機関が主催するものであること
  3. 外国の情景又は文化を主題として観光客を招致するために外国人による演劇等の興行を常時行っている敷地面積10万㎡以上の施設において行われるものであること
  4. 客席において飲食物を有償で提供せず、かつ、客の接待をしない施設(日本の非営利機関が運営するもの又は客席部分の収容人員が百人以上であるもの)において行われるものであること
  5. 当該興行により得られる報酬の総額が一日につき50万円以上であり、かつ、30日を超えない期間本邦に在留して行われるものであること

1号ロの必要書類例

【申請人本人関連書類】

書類名内容
在留資格認定証明書交付申請書入管指定様式
証明写真縦4cm×横3cm
パスポートコピー顔写真ページ、ビザページ等
履歴書・活動経歴書(任意)参考資料として提出
雇用契約書または出演契約書期間・報酬(例:1日50万円以上)・業務内容を明記

【招へい機関関連書類】

書類名内容
登記事項証明書発行3か月以内
会社案内・定款任意様式(パンフレットやWeb出力等でも可)
決算書(損益計算書・貸借対照表)最新年度分(税務申告済のもの)
過去の招聘実績資料在留カード写し、報酬支払証明

【興行施設関連書類】

書類名内容
興行施設の図面・座席表等客席数100名以上の証明(立ち見含む)
使用許可書または会場予約確認書興行日程に対応した予約または契約の写し
施設内の写真客席、舞台、控室の様子などがわかるもの
公的主催・支援の証明書地方自治体・学校・助成団体等が関与する場合はその証明書(該当する場合のみ)

在留資格「興行」【1号】ハ

1号ハの対象

芸能活動のうち、1号イ・ロに該当しないものが対象です。たとえばキャバレーやナイトクラブなど、風俗営業法第2条第1項第1号に該当する施設での演劇や歌謡、舞踊が該当します。ただし、他の区分と異なり、活動の実体や施設の設備、申請人や招聘機関の実績など、複数の厳格な要件をすべて満たす必要があります。

1号ハの対象

基準省令1号ハ

申請人が従事しようとする活動が、次のいずれにも該当していること

Ⅰ.申請人が従事しようとする活動について次のいずれかに該当していること

  1. 外国の教育機関において当該活動に係る科目を2年以上の期間専攻
  2. 2年以上の外国における経験を有する 

Ⅱ.申請人が次のいずれにも該当する本邦の機関との契約に基づいて興行に係る活動に従事すること

  1. 外国人の興行に係る業務について通算3年以上の経験を有する経営者がいる
  2. 5名以上の職員を常勤で雇用している
  3. 当該機関の経営者等が過去に犯罪行為等を行っていない

Ⅲ.申請に係る興行施設が次に掲げるいずれの要件にも適合すること

  1. 不特定かつ多数の客を対象として外国人の興行を行う施設である
  2. 風営法第2条第1項第1号に規定する施設である場合は、客の接待に従事する従業員が5名以上で、興行の在留資格をもって在留する者が接待に従事するおそれがない
  3. 13㎡以上の舞台がある
  4. 9㎡以上の出演者用の控室がある
  5. 当該施設の従業員の数が五名以上である
  6. 施設の経営者等が過去に犯罪行為等を行っていない

1号ハの必要書類例

【申請人本人関連書類】

書類名内容
在留資格認定証明書交付申請書入管指定様式
証明写真縦4cm×横3cm
パスポートコピー顔写真ページ、ビザページ等
履歴書・活動経歴書(任意)参考資料として提出
雇用契約書または出演契約書契約と報酬支払方法、控除等の根拠を明示
滞在日程表・公演日程表・宣伝資料スケジュールと広報物(チラシや広告等)

【招へい機関関連書類】

書類名内容
登記事項証明書発行3か月以内
会社案内・定款任意様式(パンフレットやWeb出力等でも可)
決算書(損益計算書・貸借対照表)最新年度分(税務申告済のもの)
常勤職員・経営者の名簿申請者該当区分に応じた要件満足の証明
職員の実績証明スタッフが該当区分要件に該当しない申立書【>>申立書】
報酬全額支払い済み証明過去3年間に興行契約外国人へ全額報酬支払い済を証明
過去の招聘実績資料在留カード写し、報酬支払証明

【興行施設関連書類】

書類名内容
営業許可証の写し風営法第2条第1項第1号に該当する施設用
興行施設の図面・座席表等客席・舞台・控室などの構成と面積を示すもの
興行契約書の写し会場使用許諾書・業務委託契約書等含む
施設内写真客席、控室、舞台、外観等が分かるもの

関連ページ

在留資格「興行」【3号】

まとめ

在留資格「興行」【1号】は、活動内容や施設の種類に応じて「イ・ロ・ハ」に分類され、それぞれ異なる要件や提出書類が求められます。また、適切な区分の選定や資料の整備が不十分な場合、許可が下りないリスクもあります。スムーズかつ確実な申請のためには、制度に精通した専門の行政書士にお問い合わせください。