永住権とは
日本での永住権とは、外国人が出身国の国籍のまま日本で永住する権利のことです。一般的には永住ビザと表現することもあります。これを取得することにより就労面でも大きなメリットがあります。例えば、日本の永住ビザを取得すれば、就労ビザのように学歴に基づく業務範囲を気にする必要なく就職が可能です。また、経営管理ビザを取得せずに経営者として事業を立ち上げることも可能です。更に永住ビザを取得した外国人と結婚した配偶者にも永住者と同様に就労制限はありません。また、通常の就労ビザでは必要な更新手続きも不要となります。
このように、日本で永住権を取得することは様々なメリットがあります。永住権を取得する条件を満たす外国人の方は永住権取得を検討することをお薦めします。
永住権取得の判断基準
永住権取得条件については、具体的に審査基準は開示されているものと開示されていないものがあります。簡単な判断基準を以下に示します。
1.在留期間
在留期間に関する条件は審査基準に開示されています。
就労系ビザ保有者 ⇒ 直近10年間日本に在留しており、その内現在の在留資格で5年間在留していること
日本人配偶者ビザ保有者 ⇒ 引き続き1年間日本に在留していること(ただし、婚姻生活は3年以上)
定住者ビザ保有者 ⇒ 定住者ビザで5年間継続して日本に在留していること。
2.在留資格
現在保有している在留資格において付与されている在留期間が、その在留資格の最長期間であること。ただし、現時点では3年の在留期間を付与されていれば条件を満たします。
3.年収
この条件については、審査基準で開示されていません。過去の事例から独身者で年収300万円が一つの基準と考えられます。この基準は提出する所得証明書類の全期間で超えている必要があります。
就労系ビザ保有者 ⇒ 直近5年間
日本人配偶者ビザ保有者 ⇒ 直近3年間
定住者ビザ保有者 ⇒ 直近5年間
4.納税
税金・年金・健康保険料といった公的な支払いを守っていることが必要です。提出する納税、年金、健康保険料の納付状況を証明書類の全期間において遅れなく納付していることが必要です。
就労系ビザ保有者の場合
所得税・住民税 ⇒ 直近5年間
年金・健康保険料 ⇒ 直近2年間
日本人配偶者ビザ保有者の場合
所得税・住民税 ⇒ 直近3年間
年金・健康保険料 ⇒ 直近2年間
定住者ビザ保有者の場合
所得税・住民税 ⇒ 直近5年間分
年金・健康保険料 ⇒ 直近2年間分
上記4つの条件を満たしている方は、永住権取得の可能性があります。詳細な条件は次の項目を読み進めて下さい。ただし、法律的な内容も含まれております。ご自身の永住権取得可能性について取り急ぎ確認したい方は、当事務所にお問い合わせ頂ければ、永住権取得要件を満たしているかどうかの簡易調査を致します。
永住権の取得要件
- 素行が善良であること(素行善良要件)
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(独立生計要件)
- 日本国の利益に合すると認められること(国益適合要件)
これらの要件については出入国管理及び難民認定法の22条に規定されている要件です。しかし、この規定だけだと「素行が善良とは?」「独立の生計を営むに足りる資産は幾ら?」「日本国の利益に合するって何?」といった疑問が出てくると思われます。そこで、ここでは上記要件について具体例を交えながら説明をしたい思います。
素行善良要件
「法律を遵守し、日常生活において社会的に非難されることのない生活を営んでいること。」
永住許可に関するガイドライン
具体的には以下の1~3の内容に該当しない者であることが求められます。
- 日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられたことがある者
- 少年法による保護処分が継続中の者
- 刑に処されていなくても軽微な法令違反を繰り返す者(例えばスピード違反のような道路交通法違反を繰り返している場合など)
独立生計要件
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
入管法22条2項2号
例えば生活保護を受給するような場合には「独立生計要件を満たさない」と判断される可能性が高いということは何となくイメージできると思います。それでは年収200万円であれば独立生計できると判断されるのか?年収500万円無いと独立生計できると判断されないのか?この基準は明確にはされていません。但し、「独身者で年収300万円」というのが一つの年収基準となっていると言われています。もちろん、被扶養者が増えれば世帯単位で独立生計を営む収入額は増加します。日本人の配偶者や永住者の配偶者が永住権を取得する場合には、2人以上の世帯になるため、独身者の基準年収よりも高い世帯年収が必要となります。
国益適合要件
前項の申請があった場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。
入管法22条2項柱書
国益適合要件は入管法22条2項柱書の内容が根拠となります。「日本国の利益に合する」とは、長期間日本を生活の本拠として生活基盤を構え、税金・健康保険・年金の支払い等の公的義務を滞りなく履行していることを日本国が求めていることを意味します。ここでは日本国は永住許可希望者に対し求めている要件を更に具体的に説明します。
1.10年以上継続して日本に在留している事
10年以上継続していることが必要となります。例えば、大学4年間を留学の在留資格で在留し、母国へ帰国して5年間母国で就業した後、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で6年間在留した場合、合計10年間の日本在留期間がありますが、その間に5年間母国に在留しているため「継続して」日本に在留していることになりません。従って、この場合には10年間の要件は満たさないこととなります。
2.現在の在留資格における在留継続期間
直近5年間が同一の在留資格で日本に在留していることが求められます。例えば、「留学」で4年間在留し、「特定活動」で1年間、「技術・人文知識・国際業務」で3年間の在留を経て、「経営・管理」で2年間日本に在留していた場合には、直近5年間の在留資格が同一ではないため、この要件は満たさないと判断される可能性が高いです。
3.現在の在留資格に与えられている最長在留期間が付与されていること
現在の在留資格での最長在留期間を付与された状態で日本に在留している必要があります。【>>在留期間の更新参照】
ただし、最長5年の期間設定がされている場合でも、当面の間は「3年」の在留期間を付与されていれば、「最長の在留期間をもって在留している」ものとされます。
4.公的義務の履行
公的義務の履行とは、税金や年金・保険料・入管法に定める届出の適正履行を意味します。特に税金や年金・保険料の納付については要件が厳しく、申請時から遡って一定期間(対象期間)の未納があった場合、追納されても未納を理由に要件不備と判断されます。例えば、地方税について、「日本人の配偶者等」では申請時から直近3年間の納付状況を確認されるのに対し、「技術・人文知識・国際業務」では申請時から直近5年間の納付状況を確認されます。
永住権の取得申請における必要書類
永住権取得申請については、現在の在留資格毎に準備する書類が異なります。ここでは日本人の配偶者の外国人女性による永住権取得申請の必要書類を紹介します。
<日本人の配偶者である外国人が永住権取得申請をする際の必要書類>
①永住許可申請書
②3ヶ月以内に撮影した写真(縦4cm×横3cm) 1枚
③申請者を含む家族全員の住民票・・・マイナンバー、住民票コードは省略。その他は全て記載
④申請者の旅券及び在留カードの提示
⑤申請人又は申請人を扶養する者の職業を証明する資料
⑥過去3年分の申請人及び申請人を扶養する者の所得及び納税状況を証明する資料
⑦申請人及び申請人を扶養する者の公的年金及び公的医療保険の保険料納付状況を証明する資料
⑧了解書
⑨理由書
⑩身元保証書
⑪身元保証人の身分証明書
(例)運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証など
※上記は必要書類の一例です。正式には出入国管理庁HPを参照ください(>>出入国管理庁HP)
永住権の取得申請不許可事例
日本での定住性が認められない場合
永住権の取得申請時点での日本滞在期間が短い
年収が低い
国民年金・厚生年金を支払っていない
永住権取得申請の許可率
永住権の許可率、申請処理件数、許可数の直近10年間のデータは以下の通りです。
直近10年の永住権取得申請の許可率
直近10年の永住権取得申請処理数及び許可数の推移
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
処理件数 | 62,965 | 50,788 | 56,182 | 52,819 | 50,907 | 61,027 | 56,902 | 57,570 | 64,149 | 58,908 |
許可件数 | 45,179 | 35,800 | 39,820 | 35,679 | 28,942 | 31,526 | 32,213 | 29,747 | 36,691 | 38,016 |
永住権の取得申請は2019年7月から提出書類が増えました。その影響とは言い切れませんが、2016年までは70%近い許可率であったところ、2017年~2021年の5年間50台まで低下しました。2022年の許可率は増加し64.5%となりましたが、それでも約3分の1は不許可でした。
このように永住権は取得難易度が非常に高い在留資格で、慣れない方が申請するにはハードルの高いものとなっています。
永住権取得のメリットとデメリット
メリット
- 更新申請の必要がなくなる
- 活動制限がなくなる → 在留資格が理由となる職業選択制限がなくなり自由な就職活動ができる
- 社会的信用度が上がる→ローンが組みやすくなる
- 永住者の子供が日本で産まれるとその子供にも永住許可が与えられる。ただし、永住者の配偶者等の例外もある。【>>永住者の配偶者等を参照】
デメリット
- 海外に行く場合、一定期間内に日本に帰国しなければ永住許可が消滅する。(再入国許可申請の期間内に帰国すれば永住許可の消滅はありません)
- 高度専門職から永住者に在留資格を変更する場合、高度専門職で認められている当該外国人又はその配偶者の親の在留資格が得られなくなる。
- 出身本国における保険制度適用に制限が課される場合がある。例えば、韓国の場合、海外の永住権取得者は、韓国に再入国後6ヶ月経過しなければ保険に再加入できません。詳細は【里帰り出産~出産費用(韓国)】の<韓国の保険制度>を参照ください。
永住権と帰化の違い
永住権と帰化は外国人が永住することができるようになるという点で非常に似た性質を有していますが、数々の異なる点があります。詳細は「帰化と永住ビザの違い」のページを参照ください。
永住権の取得申請を行政書士に依頼するメリット
永住権を取得すると非常に安定した地位が得られます。一方でその取得難易度は非常に高いことで知られています。審査は非常に厳しく、不許可率は50%程度となっていることからも非常に難易度が高いことが分かります。永住許可申請では準備する書類が多いのはもちろん、その書類作成の難易度は高く、正確性も求められます。そのため、永住権取得に関する知識を十分にもっている行政書士に依頼することをお勧めします。
関連情報
永住権に関する関連情報として以下のページもご参照ください。
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